牛絵本コレクション 46|いのちをいただく|内田美智子

  • 内田美智子 文
  • 諸江和美 絵
  • 佐藤剛史 監修
  • 西日本新聞社
  • 2009年5月11日発行
  • 80ページ

《あらすじ》食肉加工センターで働いている坂本さんは、この仕事がずっといやでした。でもある日、小学生の息子のしのぶ君から「お父さんの仕事はすごかとやね」と言われ、もう少し続けてみようと思います。 

そんな中で、食肉加工センターにまた、明日、殺される牛たちがトラックに揺られてやってきます。トラックの助手席から飛び出した小さな女の子が荷台にかけ上がり、危ないと思った坂本さんが近づくと、女の子が牛に「みいちゃん、ごめんねぇ」と何度も話しかけている声が聞こえてきます。女の子の大切な牛のみいちゃんを殺したくない坂本さんは、明日の仕事を休むことにしますが…。

《おすすめ》作者の内田美智子さんは助産師として、20年以上、多くの子どもたちに「生きる」ことについての話をしてきました。そんなときに、ご自身とは違う立場から「いのち」の話をしている坂本さんと出会われたそうです。

息子さんは初め、血まみれで働くお父さんの仕事をかっこわるい思いますが、先生の言葉で、お父さんの仕事を誇らしく思うようになります。坂本さんご自身も、仕事を辞めたい気持ちと、もう少し続けてみようと思う気持ちの間で揺れ動きます。みいちゃんの飼い主である女の子を含め、みんなの、それぞれの心の葛藤が痛いほどよく伝わり、途中から涙が溢れて止まりません。私たちが口にしているのは「いのち」なのだと言うこと、また、その「いのち」が食卓に運ばれるまでには、想像以上にたくさんの方の想いが積み重なっているのだと、改めて感じさせてくれる作品です。あとがきにある娘さんとの会話にも、また胸が熱くなります。たくさんの方に読んでいただきたい、素晴らしい一冊です。

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