動物の写真を撮る仕事

ときどき、学生さんなどから「どうすれば動物写真家になれますか?」と聞かれることがあります。私の場合、写真関係の学校を出ているわけでもなく、写真に関しては完全に独学です。まだまだ、自分の写真の技術を100%だとはとても思えません。写真家と名乗ることすら、恐縮してしまうことがあります。

私はもともと動物が好きという理由で、動物のいる農業高校へ入学しました。そこで牛の世話をして、牛の魅力に惹かれました。とにかく牛が好きになり、卒業後も、進学して勉強するよりも、毎日牛と触れ合える「酪農ヘルパー」という仕事に就く道を選びました。そこでもますます牛が好きになったのですが、腰痛という大きな壁にぶち当たってしまい、背骨にひびが入ってしまったため2年で辞職しました。

それでも、牛への想いは募るばかりで、ちょうどそのころ愛知県から遊びに来ていた友達が「牛の写真集があったらいいのにな」と、なにげなく言ったひとことをきっかけに、もともと写真が好きでカメラ小僧だった私は「牛の写真集、私が作るから待ってて!」と約束し、一眼レフを購入しました。

その頃アルバイトしていた大阪のカメラ屋に、写真好きな方や、写真学校を卒業された方がいて、みんなで奈良へ京都へとわいわい撮影旅行に行ったりしながら、聞いて、見て、撮って学びました。

「牛の可愛さをひとりでも多くのひとに伝えたい!」ということ、それがすべてでした。その強い意志を持ちつつ、動物でも人物でもなんでもとにかく撮りまくり、少し上手くなってきたらインターネットや、グループ展・個展などで発表したりと、地道に活動を続けついるうちに、少しずつ写真のお仕事を頂けるようにもなりました。

そこで一度、真剣に動物写真家を目指そうと、とある動物カメラマンのアシスタントについたのですが、現実は厳しく、動物を、撮影対象の「商品」としかみていないその姿にあっけなく夢を打ち砕かれてしまいました。たまたま、私がアシスタントについた方がそうであっただけで、本当に心から動物を愛して写真を撮ってる素晴らしい方はもちろん沢山いらっしゃいます。だけどまだ若かった私には、目の前の現実が相当ショックで、辞めてからの数日間、心因性の失声症で声が出なくなったほどでした。

「有名になりたい!」「お金を儲けたい!」と思ってしまったら、写真を撮る理由が変わってしまうかもしれない。それならば私は、無理に背伸びをせず、写真家として未熟でも、副業をしながらでも、のんびりと好きな動物の写真を撮っていきたい。そう、強く思ったのです。

おかげさまで今、少しずつ牛写真家や動物写真家としてお仕事をいただくことができるようになりましたが、今でもその気持ちは変わっていません。 写真を見てくださった方に「凄い!」「上手!」と思っていただくことより、「あぁ、この人は本当に動物が好きなんだなぁ」と思っていただくことの方が、私には嬉しいです。誰もが知っているような有名な写真家になれなくても、牛好きな人に喜んでもらえて「牛ってかわいいよね!」と共感してもらえれば、それで十分だと思っています。

動物の写真には、人を癒す大きな力があると信じています。見た人を笑顔にできる最高の被写体です。自分が「かわいいな!」と思う表情や仕草を瞬間的に切り取ること、そのためにはまず被写体である動物を愛して、向き合い、気持ちを理解して、呼吸を合わせることが大事なのだと思っています。「牛に写真を撮らせて貰っている」というのを胸に、これからも撮り続けていきたいと思います。

これから動物写真家を目指そうとしている若い皆さんにも、どうかそれぞれの写真を撮る確固たる理由を持って、自分のペースで、ゆっくり進んでいってほしいなと思います。

撮影|リーダーシップ 2020年春号

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