ブラミルク@東京 第5弾 「武家社会の崩壊と黎明期の牛乳搾取業」に参加してきました

ブラミルク@東京 第5弾 「武家社会の崩壊と黎明期の牛乳搾取業」の講習会

「ブラミルク」は、ミルク一万年の会が主催されている、酪農に関する史跡をめぐる活動です。11月5日に開催された東京 第5弾では、明治時代に東京酪農がスタートした地でもある、千代田区の牧場跡地をめぐってきました。

まずは大妻女子大学にて、講義で歴史を学びました。

「武家屋敷の荒廃と牛乳搾取業の展開〜明治維新による東京都市空間の変容〜」
講師:金谷匡高先生(世田谷区教育委員会 学芸員、法政大学 江戸東京研究センター/エコ地域デザイン研究センター客員研究員)

「明治初期の荒廃と牛乳搾取業者〜先駆者・坂川牛乳店と北辰社の系譜〜」
講師:矢澤好幸先生(日本酪農乳業史研究会 会長)

私は家庭の事情で矢澤先生の講義から参加。金谷先生の講義も拝聴したかったです‥!

資料として配布された明治時代と現在の千代田区の地図。講義のあとは、このふたつを持って、ブラミルクへ出発です!

1「阪川牛乳店」跡地

坂川牛乳店は、坂川富晴氏が甥の松本良順氏の勧めによって牛乳を仕入れて販売するようになったのが始まりです。その後、1870(明治3)年に乳牛2頭を飼いはじめ、頭数を増やして5番町に移転し、本格的な搾乳業を開始します。

場所は現在の駐日英国大使館の向かいに。建物をぐるっと一周まわると、かなりの大きさが伺えました。

2「英華舎(平田牧場)」跡地

1872(明治5)年に平田貞次郎氏が、陸軍大将で政治家でもあった山県有朋氏からの出資を受け、英華舎・平田牛乳搾乳所を開設します。

(講師の金谷匡高先生と、ミルク一万年の会の前田浩史さん)

英華舎の建っていた場所は、現在は狭い道路沿いにあるため、手前の東郷元帥記念公園で説明を受けました。実際の跡地はこの公園の少し先、お花屋さんなどが並ぶ商店街の一角にあります。

ちなみに東郷元帥記念公園に隣接しているこちらの建物は「千代田区立九段小学校」。九段小学校は、上六尋常小学校として 1903(明治36)年に創立されたものの、1923(大正12)年の関東大震災によって焼失してしまい、1926(大正15)年に復興小学校として建替えられたそうです。今年4月に景観重要建造物に指定されています。

3「猪股要助牧場」跡地

1871(明治4)年に開業された牧場。

市ヶ谷駅と飯田橋駅の中間あたり、外濠(そとぼり)沿いをゆっくり歩いて向かいます。この辺り、牛込濠(うしごめぼり)というそうです。

現在の法政大学 市ヶ谷キャンパス。ここの入口奥の階段あたりに、傾斜を利用して牛舎が建てられていたそうです。

法政大学のお隣の、現・東京逓信病院のある場所には、以前は陸軍病院があり、その初代軍医総監が松本良順氏でした。松本良順氏は治療よりも予防を重要視し、その一環として牛乳を推奨されていたので、この病院にも新鮮な牛乳が運ばれ、健康維持に役立てられていたのかもしれません。

途中で見かけた、明治5年頃の地図を示した看板。

4「北辰社」跡地

北辰社牧場は、徳川育英会育英黌農業科(現・東京農業大学)の創設者でもある榎本武揚先生が自宅に開業した牧場です。

その後、前田喜代松氏が、牛乳搾取業の開祖ともいわれる酪農乳業の指導者・前田留吉氏の開業した芝区の搾乳場で経営を学び、日本牧牛会社での勤めを経て渡米し、帰国後に譲り受け軌道に乗せたそうです。

(矢澤好幸先生)

現在も石碑が残されています。

5「愛光舎」跡地

愛光舎牧場は、医師でクリスチャンだった角倉賀道氏が1899(明治32)年に創業。天然痘ワクチン製造の目的で乳牛を飼いはじめたそうです。創業の翌年には渡米視察し、酪農先進国のアメリカを手本に蒸気で殺菌した牛乳を日本で初めて売り出します。

※天然痘のワクチンは人類初のワクチンとも言われています。天然痘は致死率が高く、感染力も強い伝染病でした。イギリスの医学者 ジェンナー氏が、農村で乳搾りをしている女性から「私は以前に牛痘(牛がかかる天然痘で、人にも伝染するけど症状は軽い)にかかったから、天然痘にはかかりません」と聞いたことから、牛痘に感染した人の“膿”を注射して、免疫を得ることを発見したのだそうです。ワクチンの歴史の始まりにも牛が関係していたのですね。

愛光舎の名前は現在もハンバーガーショップ「I-Kousya(アイコウシャ)」として残っていました。

6「日新社」跡地

日新社は愛光舎牧場の牛乳を販売していたところ?すみません、記憶が曖昧です。。

愛光舎の少し先に日新社があったそうです。

ここまで約1万歩!たくさん歩きました!ミルク一万年の会ならぬ、ミルク一万歩の会ですね^^

ミルクの歴史を辿りながらのお散歩、とっても楽しかったです。と同時に、何十年、何百年かあとに、東京に限らず今ある牧場がこうしてまた「跡地」として紹介されることがないよう、ひきつづき酪農業界を大切に、応援していきたいなと、身が引き締まる思いでした。

ミルク一万年の会の皆さま、貴重な機会をありがとうございました。

ミルク一万年の会Facebookページ

※記事は配布された資料や書籍、インターネットなどで調べて書いたものです。

▼今回訪問した場所も含め、東京酪農の史跡について詳しく書かれている書籍「東京ミルクものがたり」。私も少しですが写真をお使いいただいています。酪農の歴史、東京の歴史にご興味のある方はぜひご一読ください!

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